長雨晴れ間なきころ 005
原文 読み 意味 帚木01章05@源氏物語
長雨晴れ間なきころ 内裏の御物忌さし続きて いとど長居さぶらひたまふを 大殿にはおぼつかなく恨めしく思したれど よろづの御よそひ何くれとめづらしきさまに調じ出でたまひつつ 御息子の君たちただこの御宿直所の宮仕へを勤めたまふ
ながあめ/はれま/なき/ころ うち/の/おほむ-ものいみ/さしつづき/て/いとど/ながゐ/さぶらひ/たまふ/を おほいどの/に/は/おぼつかなく/うらめしく/おぼし/たれ/ど よろづ/の/おほむ-よそひ/なにくれ/と/めづらしき/さま/に/てうじ-いで/たまひ/つつ おほむ-むすこ/の/きみたち/ただ/この/おほむ-とのゐどころ/の/みやづかへ/を/つとめ/たまふ
長雨が晴れる間もない時節、内裏の物忌みがうち続いていつにもまして長居なさるのを、大臣方では待ちわびて恨めしくお思いであったが、それでもご装束万端どれもふたつとないような仕立てに誂えておあげになり、ご子息たちの方ではただこの君の御曹司にばかり出仕なされた。
文構造&係り受け 02-005
主語述語と大構造 ど…調じ出でたまひつつ…ただを勤めたまふ:四次
長雨晴れ間なきころ 〈内裏の御物〉忌さし続きて〈[光源氏]〉いとど長居さぶらひたまふを 〈大殿〉にはおぼつかなく恨めしく思したれど よろづの御よそひ何くれとめづらしきさまに調じ出でたまひつつ〈御息子の君たち〉ただこの御宿直所の宮仕へを勤めたまふ
助詞と係り受け
長雨晴れ間なきころ 内裏の御物忌さし続きて いとど長居さぶらひたまふを 大殿にはおぼつかなく恨めしく思したれど よろづの御よそひ何くれとめづらしきさまに調じ出でたまひつつ 御息子の君たちただこの御宿直所の宮仕へを勤めたまふ
「大殿には…調じ出でたまひつつ」「御息子の君たち…勤めたまふ」:並列
古語探訪;失われた意味を求めて
長雨 02-005
五月雨。
内裏の御物忌 02-005
帝の物忌みで、宮中全体が謹んで部屋に籠る。光源氏も自分の曹司である桐壺の局でじっとしている。伊勢物語の初段が諒闇であったことと呼応する。
いとど 02-005
ますます、いつも以上に。
おぼつかなく 02-005
待ちわびる思い。
御よそひ 02-005
婿の衣装。
御宿直所 02-005
母がもともと住んでいた桐壺を光は私室として利用している。左大臣の子息(頭中将)は、長雨の無聊をかこってそこへ遊びにきている。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:天候/帝/光源氏/左大臣/頭中将ほか
分岐型・中段型:A→(B→C|)D:A→D、B→C
《長雨晴れ間なきころ 内裏の御物忌さし続きて いとど長居さぶらひたまふを》A
長雨が晴れる間もない時節、内裏の物忌みがうち続いていつにもまして長居なさるのを、
《大殿にはおぼつかなく恨めしく思したれど》B
大臣方では待ちわびて恨めしくお思いであったが、
《よろづの御よそひ何くれとめづらしきさまに調じ出でたまひつつ》C
それでもご装束万端どれもふたつとないような仕立てに誂えておあげになり、
《御息子の君たちただこの御宿直所の宮仕へを勤めたまふ》D
ご子息たちの方ではただこの君の御曹司にばかり出仕なされた。