絶えぬ宿世浅からで 074
原文 読み 意味 帚木05章13@源氏物語
絶えぬ宿世浅からで 尼にもなさで尋ね取りたらむも やがてあひ添ひて とあらむ折もかからむきざみをも 見過ぐしたらむ仲こそ契り深くあはれならめ 我も人もうしろめたく心おかれじやは
たエ/ぬ/すくせ/あさから/で あま/に/も/なさ/で/たづね/とり/たら/む/も やがて/あひそひ/て とあら/む/をり/も/かから/む/きざみ/を/も みすぐし/たら/む/なか/こそ/ちぎり/ふかく/あはれ/なら/め われ/も/ひと/も/うしろめたく/こころ/おか/れ/じ/やは
エ:や行の「え」
(左馬頭)切っても切れぬ前世の縁が深く尼になすすんでに連れ戻せた場合でも、そのまま連れ添い、あんなこともこんな場合も許しあった夫婦仲こそ契り深く情愛こまやかなものですが、自分も妻もどうして心許すことができましょう。
文構造&係り受け
主語述語と大構造 も…うしろめたく心おかれじやは:三次
〈[夫]〉絶えぬ宿世浅からで 〈[妻]〉尼にもなさで 尋ね取りたらむも /〈[夫婦]〉やがてあひ添ひて とあらむ折もかからむきざみをも見過ぐしたらむ〈仲〉こそ 契り深くあはれならめ/ 〈我も人も〉うしろめたく心おかれじやは
助詞と係り受け
絶えぬ宿世浅からで 尼にもなさで尋ね取りたらむも やがてあひ添ひて とあらむ折もかからむきざみをも 見過ぐしたらむ仲こそ契り深くあはれならめ 我も人もうしろめたく心おかれじやは
これまでは女が出家した場合について述べて来たが、ここでは、妻が出家してしまう前に見つけ出した場合を述べる。
「尋ね取りたらむ」→「うしろめたく心おかれじやは」
「やがてあひ添ひてとあらむ折もかからむきざみをも見過ぐしたらむ仲こそ契り深くあはれならめ」:挿入
古語探訪;失われた意味を求めて
宿世 02-074
夫との前世からの縁。
やがて 02-074
心一つに思ひあまる時でもはひ隠れたりせず、そのまま。
あひ添ひ 02-074
夫婦一緒に暮らす。
とあらむをりもかからむきざみをも 02-074
こんなことがあろうとあんなことがあろうと。
仲こそ契り深くあはれならめ 02-074
「絶えぬ宿世浅からで」よりも「契り深くあはれならめ」という発言は当時の人生観(仏教観)からはみ出している点で注目すべきであろう。「こそ……已然形」は下に逆接でつづいてゆく。
我も人も 02-074
夫である私も妻である相手も、「あひ知れる人/02-070」も。
心おかれじやは 02-074
否定の反語なので、強い肯定を表す。必ず心がおかれる。二人の心に隙ができる。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:夫/妻/夫婦ともども
分岐型・中断型:A→(B→)C→/D→E→F→/G:A→C→G、B→C、D→E→F
《絶えぬ宿世浅からで・尼にもなさで・尋ね取りたらむも》A・B・C
切っても切れぬ前世の縁が深く尼になすすんでに連れ戻せた場合でも、
《やがてあひ添ひて・とあらむ折もかからむきざみをも見過ぐしたらむ・仲こそ契り深くあはれならめ》D・E・F
そのまま連れ添い、あんなこともこんな場合も許しあった夫婦仲こそ契り深く情愛こまやかなものですが、
《我も人もうしろめたく心おかれじやは》G
自分も妻もどうして心許すことができましょう。