わざとの御学問はさ 118
原文 読み 意味 桐壺08章13@源氏物語
わざとの御学問はさるものにて 琴笛の音にも雲居を響かし すべて言ひ続けばことごとしううたてぞなりぬべき人の 御さまなりける
わざと/の/ご-がくもん/は/さる/もの/にて こと/ふえ/の/ね/に/も/くもゐ/を/ひびかし すべて/いひ-つづけ/ば/ことごとしう/うたて/ぞ/なり/ぬ/べき/ひと/の おほむ-さま/なり/ける
漢詩文など正式な学問はもとより、琴や笛の音色でも評判は宮中に響き渡り、美点をすべて並べつづけると仰々しく疎ましく思えてしまうそんなご様子でした。
文構造&係り受け
主語述語と大構造 人の御さまなりける:三次
〈[御子]〉わざとの御学問はさるものにて 琴笛の音にも雲居を響かし 〈[私=語り手]〉すべて言ひ続けば ことごとしううたてぞなりぬべき人の 御さまなりける
助詞と係り受け
わざとの御学問はさるものにて 琴笛の音にも雲居を響かし すべて言ひ続けばことごとしううたてぞなりぬべき人の 御さまなりける
「雲居を響かし」は連用中止法。
「うたてぞなりぬべき人の御様」:係助詞「ぞ」の結びは連体形の「べき」だが、「人の御さま」を修飾するため流れと考える。
「人の御さまなりける」:文末「ける」は「の」に対する結び(連体終止法と考えてもよい)
わざとの御学問はさるものにて 琴笛の音にも雲居を響かし すべて言ひ続けばことごとしううたてぞなりぬべき人の 御さまなりける
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
助詞・助動詞の識別:に ぬ べき なり ける
- に:断定・なり・連用形
- ぬ:強意・ぬ・終止形
- べき:当然・べし・連体形(「ぞ」の結びである連体形が体言に続くことで流れた)
- なり:断定・なり・連用形
- ける:喚起・けり・連体形(連体止め)
敬語の区別:御 御
わざとの御学問はさるものに て 琴笛の音に も雲居を響かし すべて言ひ続けばことごとしううたてぞなりぬ べき人の 御さまなり ける
尊敬語 謙譲語 丁寧語
古語探訪;失われた意味を求めて
わざとの御学問 01-118
しっかりと態度でのぞむべき学問、貴族社会では必須である学問、即ち漢学。
さるものに 01-118
当然の立派に身につけ。
雲居 01-118
雲があるように敷居の高い場所、即ち、宮中。
ことごとしう 01-118
度重なることからくる仰々しさ。「ものものし」のような威圧感はない。うるさい。
うたて 01-118
物事がどんどん進んでいくことについて行けない感覚。読者が引いてしまうだろうとの弁明。相人が光源氏の将来を危ぶむ時に、なぜだろうと読者が驚きを感じるためにも、ここは光源氏の万能ぶりをアピールしておきたいという文脈上の要請がある。それにしても大袈裟だなと感じてしまう。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:光源氏/語り手
中断型:A|B|C→D:A、B、C→D
《わざとの御学問はさるものにて》A
漢詩文など正式な学問はもとより、
《琴笛の音にも雲居を響かし》B
琴や笛の音色でも評判は宮中に響き渡り、
《すべて言ひ続けば・ことごとしううたてぞなりぬべき人の 御さまなりける》C・D
美点をすべて並べつづけると仰々しく疎ましく思えてしまうそんなご様子でした。