いと口惜しくねぢけ 063
原文 読み 意味 帚木05章02@源氏物語
いと口惜しくねぢけがましきおぼえだになくは ただひとへにものまめやかに静かなる心のおもむきならむよるべをぞ つひの頼み所には思ひおくべかりける
いと/くちをしく/ねぢけがましき/おぼエ/だに/なく/は ただ/ひとへ/に/もの-まめやか/に/しづか/なる/こころ/の/おもむき/なら/む/よるべ/を/ぞ つひ/の/たのみ-どころ/に/は/おもひ/おく/べかり/ける
エ:や行の「え」
(頭中将)ひどく後悔するほど性根のねじけた感じさえなければ、ただもう主婦業に誠実でおだやかな性格の女を、生涯の伴侶には決め置くのがよろしいでしょう。
文構造&係り受け
主語述語と大構造 をぞ…には思ひおくべかりける:五次
〈[男]〉いと口惜しくねぢけがましき〈おぼえ〉だになくは ただひとへにものまめやかに静かなる心のおもむきならむよるべをぞ つひの頼み所には思ひおくべかりける
助詞と係り受け
いと口惜しくねぢけがましきおぼえだになくは ただひとへにものまめやかに静かなる心のおもむきならむよるべをぞ つひの頼み所には思ひおくべかりける
「おぼえだになくは」→「ただ…よるべをぞ」→「思ひおくべかりける」:大構造
「ただ」→「よるべをぞ」
古語探訪;失われた意味を求めて
ねぢけがましき 02-063
性格がねじれていること。頭中将の前言「ただひたふるに子めきて柔らかならむ人/02-059」を左馬頭との議論から否定。積極的基準から消極的基準に変化。
ものまめやか 02-063
「常はすこしそばそばしく心づきなき人のをりふしにつけて出でばえするやうもありかし/02-061」とある左馬頭の意見を取り入れたもの。
口惜しく 02-063
期待に反したときの感想。
おぼえ 02-063
評判。
心のおもむき 02-063
性格。
よるべ 02-063
伴侶。
〈テキスト〉を紡ぐ〈語り〉の技法
交差禁止 02-063
「ただ」は前文では述語「よらじ」「言はじ」にかかるので、ここも述語にかかると考えてよさそうであるが、交差禁止の大原則に違反する。Aは意味上Cにかかる。A→C。従って、AからC内の要素は交差が禁じられているので外に出られず、Bは必然的にCにかかることになる。情報の中心もこの文では末尾の「思ひおくべかりける」にあるのではなく、「ひとへにものまめやかに静かなる心のおもむきならむよるべ」にあり、「ただ」はここにかけるのが自然なのだ。「ただ…をぞ」で係り結びの強調と呼応していることからもそれが自然だとわかる。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:妻候補/発言者(頭中将)
直列型:A→B→C→D:A→B→C→D
《いと口惜しくねぢけがましきおぼえだになくは》A
ひどく後悔するほど性根のねじけた感じさえなければ、
《ただ・ひとへにものまめやかに静かなる心のおもむきならむよるべをぞ・つひの頼み所には思ひおくべかりける》B・C・D
ただもう主婦業に誠実でおだやかな性格の女を、生涯の伴侶には決め置くのがよろしいでしょう。