御前の壺前栽のいと 082

2021-03-08

原文 読み 意味 桐壺07章02@源氏物語

御前の壺前栽のいとおもしろき盛りなるを御覧ずるやうにて 忍びやかに 心にくき限りの女房四五人さぶらはせたまひて 御物語せさせたまふなりけり

お-まへ/の/つぼせんざい/の/いと/おもしろき/さかり/なる/を/ごらんずる/やう/にて しのびやか/に こころにくき/かぎり/の/にようばう/し/ご-にん/さぶらは/せ/たまひ/て おほむ-ものがたり/せ/させ/たまふ/なり/けり

御前にある坪庭の植込みがとても趣きぶかく盛りになっているさまを鑑賞なさる風にしながら、その実人目を忍んで教養豊かな女房ばかりを四五人を側にお召しになって、あの方の昔語りをなさっておいででした。

文構造&係り受け

主語述語と大構造 せさせたまふなりけり:三次

〈[帝]〉御前の壺前栽のいとおもしろき盛りなるを御覧ずるやうにて 忍びやかに 心にくき限りの女房四五人さぶらはせたまひて 御物語せさせたまふなりけり

助詞と係り受け

御前の壺前栽のいとおもしろき盛りなるを御覧ずるやうにて 忍びやかに 心にくき限りの女房四五人さぶらはせたまひて 御物語せさせたまふなりけり

「御前の壺前栽の…盛りなる」:A「主格」のB(連体形)


「忍びやかに」→「御物語せさせたまふ」

御前壺前栽いとおもしろき盛りなる御覧ずるやう 忍びやかに 心にくき限り女房四五人さぶらはたまひ 御物語せさせたまふなりけり

助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞

助詞・助動詞の識別:なる に せ させ なり けり

  • なる:断定・なり・連体形
  • :断定・なり・連用形
  • :使役・す・連用形
  • させ:尊敬・さす・連用形
  • なり:断定・なり・連用形
  • けり:喚起・けり・終止形
敬語の区別:御 御覧ず さぶらふ たまふ 御 させたまふ

前の壺前栽のいとおもしろき盛りなる を御覧ずるやうに て 忍びやかに 心にくき限りの女房四五人さぶらはたまひて 物語せさせたまふなり けり

尊敬語 謙譲語 丁寧語

古語探訪;失われた意味を求めて

壺前裁 01-082

壺は坪庭、前裁は植込み。ここは清涼殿と後涼殿との間にある壺庭で、朝餉(あさがれい)の壺ないしは、台盤所(だいばんどころ)の壺。

御覧ずるやうにて 01-082

目は坪庭を向いているが、心は物語に向いている。

忍びやかに 01-082

ひっそりと。後に語られる弘徽殿の女御がこれみよがしに管弦の会を催すのと対照的である。

心にくき 01-082

教養や洗練さが気になる、気にかかる、賞賛にあたる。

御物語せさせたまふ 01-082

物語に「御」とあるので、「させ」は使役でなく、「させたまふ」で最高敬語と考える。帝みずから女房相手に更衣の話をなさっていた。女房に話させるのであれば「御」は不要で、「物語させたまふ」となろう。内容はわからないが、おそらくは亡き更衣の話である。

耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉

語りの対象:

分岐型:A→B+C→D:A→B+C→D(構造上BとCは並列)

御前の壺前栽のいとおもしろき盛りなるを御覧ずるやうにて》A
御前にある坪庭の植込みがとても趣きぶかく盛りになっているさまを鑑賞なさる風にしながら、


忍びやかに・心にくき限りの女房四五人さぶらはせたまひて》 B・C
その実人目を忍んで教養豊かな女房ばかりを四五人を側にお召しになって、


御物語せさせたまふなりけり》D
あの方の昔語りをなさっておいででした。

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