なり上れどももとよ 032
原文 読み 意味 帚木03章01@源氏物語
なり上れどももとよりさるべき筋ならぬは 世人の思へることも さは言へどなほことなり
なりのぼれ/ども /もとより/さるべき/すぢ/なら/ぬ/は よひと/の/おもへ/る/こと/も さは/いへ/ど/なほ/こと/なり
(頭中将)官位が上がっても本来それにふさわしい血筋でない場合は、世間の人の腹の中も、口ではちやほやしようとやはり別なのです。
文構造&係り受け
主語述語と大構造 は…ど…ことなり:三次
〈[娘の父]〉なり上れどももとよりさるべき筋ならぬは @〈世人〉の思へる〈こと〉も @〈[父]〉さは言へど@@なほことなり
助詞と係り受け
なり上れどももとよりさるべき筋ならぬは 世人の思へることも さは言へどなほことなり
光源氏の質問「(また)直人の上達部などまでなり上り 我は顔にて家の内を飾り人に劣らじと思へる(そのけぢめをばいかが分くべき)/02-029」に対する頭中将の答え。いくら成り上がり者が人に劣らないと思ってみたところで、世間はそうは思わないし、自分も(頭中将)違うと思う、ということ。
「さるべき筋ならぬは」→「なほことなり」
「世人の思へる」:「人に劣らじと思へる/02-029」に対応
「さは言へど」:「我は顔にて家の内を飾り人に劣らじ(と思へる)/02-029」を受ける
「なほことなり」:自分では「人に劣らじ」と思っているが世間はそうは思わっていないことを言う
「なほことなり」(「なり」は連用形)→「とりどりにことわりて 中の品にぞ置くべき/02-033」
古語探訪;失われた意味を求めて
なり上れども 02-032
具体的には光源氏の発言「直人の上達部などまでなり上り/02-029」を受けているので、貴族でない者が貴族の仲間入りをすることになってもとの意味である。
さるべき筋 02-032
貴族社会の中で出世のできる血筋。
世人の思へること 02-032
世間の評価。
さは言へど 02-032
直訳すれば、そうは言っても。資産ができて、口ではほめられる。
〈テキスト〉〈語り〉〈文脈〉の背景
誰の発話か 02-032
「なり上れども…例ども多かりかし」の発言は、左馬頭とする説と、頭中将とする説がある。この発言は光源氏の質問に対する答えであること、光源氏の揶揄に対して頭中将が憎んだことなど、頭中将説の根拠に挙げられる。当を得ているだろう。他に、「宮仕に出で立ちて思ひがけぬ幸ひとり出づる例」など光源氏の母(桐壺更衣)と受け取れかねない発言は、左馬頭では光源氏の前では行えない。このあたり頭中将の馴れ馴れしさが如実に表われている。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:成り上がり者/世の人
分岐型:A→B→(C→(D→))E:A→B→E、C→E、D→E
《なり上れども・もとよりさるべき筋ならぬは》A・B
官位が上がっても本来それにふさわしい血筋でない場合は、
《世人の思へることも・さは言へど・なほことなり》C・D・E
世間の人の腹の中も、口ではちやほやしようとやはり別なのです。