大臣気色ばみ 聞こ 156 ★☆☆
原文 読み 意味 桐壺10章16@源氏物語
大臣気色ばみ きこえたまふことあれど もののつつましきほどにて ともかくもあへしらひきこえたまはず
おとど/けしきばみ きこエ/たまふ/こと/あれ/ど もの/の/つつましき/ほど/にて ともかくも/あへ-しらひ/きこエ/たまは/ず
エ:や行の「え」
大臣は顔色を改め今夜の娘の件でしかとお伝え申したが、何ぶん恥ずかしい年頃なのでなんともご返事申し上げにならない。
文構造&係り受け
主語述語と大構造 あへしらひきこえたまはず:四次
〈大臣〉気色ばみ きこえたまふ〈こと〉あれど 〈[光源氏]〉もののつつましきほどにて ともかくもあへしらひきこえたまはず
助詞と係り受け
大臣気色ばみ きこえたまふことあれど もののつつましきほどにて ともかくもあへしらひきこえたまはず
「もののつつましきほどにて」:語り手による理由説明
大臣気色ばみ きこえたまふことあれど もののつつましきほどにて ともかくもあへしらひきこえたまはず
助詞:格助 接助 係助 副助 終助 間助 助動詞
助詞・助動詞の識別:に ず
- に:断定・なり・連用形
- ず:打消・ず・終止形
敬語の区別:きこゆ たまふ きこゆ たまふ
大臣気色ばみ きこえたまふことあれど もののつつましきほどに て ともかくもあへしらひきこえたまはず
尊敬語 謙譲語 丁寧語
古語探訪;失われた意味を求めて
気色ばみきこえたまふ 01-156:「きこえたまふ」は本動詞、真剣な表情で訴えた
「きこえ」は「気色ばむ」の補助動詞とし、それとなくほのめかすほどの意味と解釈されている。しかし、左大臣にとって光源氏を婿にとることは家の大事であって、ほのめかす話題ではない。はっきりと伝えねばならないことだ。若い光源氏ばかりか政治の重責を担う左大臣までが、てきぱき物事を推し進められないのでは、国が危ぶまれるし、物語の構成としても効果的でない。ここは、「気色ばみ 聞こえたまふ」と本動詞二つと考える。気持ちが顔に表れるとは、この場合、真剣な顔になって、表情を改めてなどして、今夜は娘のことをよろしくお願いしたい旨をはっきりと口に出して伝えたのである。添ひ臥し役の女性は正室になることが多かった(『北山抄』)が、それが規則というものではないので、生涯にわたる婚姻関係が左大臣家の願いであることを伝えておく必要があったろう。ただ、光源氏にすれば、初夜のことを口にされても、年齢的に恥ずかしくてならないので、何ともかとも返事ができなかったのである。
もののつつましき 01-156
気恥ずかしい。「ものの」は諸事一般。
あへしらひ 01-156
応答する。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:左大臣/光源氏
直列型:A→B→C:A→B→C
《大臣気色ばみ きこえたまふことあれど》A
大臣は顔色を改め今夜の娘の件でしかとお伝え申したが、
《もののつつましきほどにて・ともかくもあへしらひきこえたまはず》B・C
何ぶん恥ずかしい年頃なのでなんともご返事申し上げにならない。