とあればかかりあふ 052 ★★☆
原文 読み 意味 帚木04章06@源氏物語
とあればかかりあふさきるさにて なのめにさてもありぬべき人の少なきを 好き好きしき心のすさびにて 人のありさまをあまた見合はせむの好みならねど ひとへに思ひ定むべきよるべとすばかりに 同じくはわが力入りをし直しひきつくろふべき所なく 心にかなふやうにもやと 選りそめつる人の定まりがたきなるべし
とあれば-かかり/あふさきるさ/にて なのめ/に/さても/あり/ぬ/べき/ひと/の/すくなき/を すきずきしき/こころ/の/すさび/にて ひと/の/ありさま/を/あまた/みあはせ/む/の/このみ/なら/ね/ど ひとへ/に/おもひ/さだむ/べき/よるべ/と/す/ばかり/に おなじく/は/わが/ちからいり/を/し/なほし/ひきつくろふ/べき/ところ/なく こころ/に/かなふ/やう/に/も/や/と えりそめ/つる/ひと/の/さだまり-がたき/なる/べし
(頭中将)こちらがよくても向こうがだめという具合に思いにまかせぬもので、不充分ながらそのままでこと足りる人が少ないのが原因であって、浮ついた気持ちで面白半分に、女の生態を数多く見比げようとの趣味からではないのだけれど、ひたすら生涯の伴侶を決定せねばと思いつめるばかりに、どうせならわざわざこちらが骨折りして直し改めねばならないところなどなく、意にかなう風であればと、選んでかかる人は決まりにくくなってしまうものなのです。
文構造&係り受け
主語述語と大構造 の定まりがたきなるべし:四次
とあればかかり あふさきるさにて なのめにさてもありぬべき〈人〉の少なきを @好き好きしき心のすさびにて 人のありさまをあまた見合はせむの好みならねど @ひとへに思ひ定むべきよるべとすばかりに @同じくはわが力入りをし直しひきつくろふべき〈所〉なく 心にかなふやうにもやと@@@ 選りそめつる〈人〉の定まりがたきなるべし
助詞と係り受け
とあればかかりあふさきるさにて なのめにさてもありぬべき人の少なきを 好き好きしき心のすさびにて 人のありさまをあまた見合はせむの好みならねど ひとへに思ひ定むべきよるべとすばかりに 同じくはわが力入りをし直しひきつくろふべき所なく 心にかなふやうにもやと 選りそめつる人の定まりがたきなるべし
「とあればかかりあふさきるさにて」→「(さてもありぬべき人の)少なき(を)」(「を」は逆接を表す接続助詞、詠嘆の終助詞も可、その場合ここで文を切る)
「さてもありぬべき人の少なきを」→「選りそめつる」(長い挿入を挟むことに注意)
「あまた見合はせむの好みならねど」→「選りそめつる」
「ひとへに思ひ定むべきよるべとすばかりに」→「選りそめつる」
「同じくはわが力入りをし」「直しひきつくろふべき」(並列)→「所なく」
古語探訪;失われた意味を求めて
とあればかかり 02-052
一方がこうなれば、他方もこうなる。
あふさきるさにて 02-052
あちらがよけらば、こちらが悪く
なのめに 02-052
不充分ながらも。
さてもありぬべき 02-052
そのままでかまわない。
すさび 02-052
もてあそび。
よるべ 02-052
頼みとする相手、夫、妻。
わが力入りをし直しひきつくろふ 02-052
無理に矯正する。
〈テキスト〉〈語り〉〈文脈〉の背景
頭中将の女性観の揺れ 02-052
欠点ある場合には強制してでも直すといったが欠点はできればない方がいいという発言には、頭中将の女性観が如実に表れている。この後見るように、この女性観は左馬頭によって否定される。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:妻候補/世の男性(発言者)
分岐型:A→B→(C→D→(E→(F+G→H→)))I→J:A→B→I→J、C→D→I、E→I、F+G→H→I
《とあればかかりあふさきるさにて・なのめにさてもありぬべき人の少なきを》A・B
こちらがよくても向こうがだめという具合に思いにまかせぬもので、不充分ながらそのままでこと足りる人が少ないのが原因であって、
《好き好きしき心のすさびにて・人のありさまをあまた見合はせむの好みならねど》C・D
浮ついた気持ちで面白半分に、女の生態を数多く見比げようとの趣味からではないのだけれど、
《ひとへに思ひ定むべきよるべとすばかりに》E
ひたすら生涯の伴侶を決定せねばと思いつめるばかりに、
《同じくはわが力入りをし・直しひきつくろふべき所なく・心にかなふやうにもやと》F・G・H
どうせならわざわざこちらが骨折りして直し改めねばならないところなどなく、意にかなう風であればと、
《選りそめつる人の・定まりがたきなるべし》I・J
選んでかかる人は決まりにくくなってしまうものなのです。