さて 世にありと人 041
原文 読み 意味 帚木03章10@源氏物語
さて 世にありと人に知られず さびしくあばれたらむ葎の門に 思ひの外にらうたげならむ人の 閉ぢられたらむこそ 限りなくめづらしくはおぼえめ
さて よ/に/あり/と/ひと/に/しら/れ/ず さびしく/あばれ/たら/む/むぐら/の/かど/に おもひ/の/ほか/に/らうたげ/なら/む/ひと/の とぢら/れ/たら/む/こそ かぎりなく/めづらしく/は/おぼエ/め
エ:や行の「え」
(左馬頭)はてさて、そんな人がこの世にいるとは誰にも知られず、さびしく荒果てたような草深い家に、予想以上に愛らしい感じの人が、余儀なく隠れ住んでいるとしたら、それこそ限りなくすばらしいことだと思えましょう。
文構造&係り受け
主語述語と大構造 こそ…はおぼえめ:四次
さて 世にありと人に知られず さびしくあばれたらむ葎の門に 思ひの外にらうたげならむ〈人〉の 閉ぢられたらむ〈[こと]〉こそ 〈[私=発言者]〉限りなくめづらしくはおぼえめ
助詞と係り受け
さて 世にありと人に知られず さびしくあばれたらむ葎の門に 思ひの外にらうたげならむ人の 閉ぢられたらむこそ 限りなくめづらしくはおぼえめ
「さて」→「こそ」
「世にありと人に知られず」「(人の)閉ぢられたらむ」(並列)→「こそ」
「さびしくあばれたらむ葎の門に」→「閉ぢられたらむ」
「思ひの外にらうたげならむ」→「人(の)」
古語探訪;失われた意味を求めて
あばれたらむ 02-041
荒廃した。昔物語にあるパターン。
思ひの外に 02-041
予想よりさらに上。
らうたげ 02-041
かわいい。
閉ぢられたらむ 02-041
「られ」は、受身であり、自分の意志によるのではなく、外的条件が働いてそうしむけられているニュアンスをもつ。「閉づ」は他動詞。
〈テキスト〉〈語り〉〈文脈〉の背景
伏線の張り方 02-041
頭中将の発言が、「にぎははしきによるべきななり/02-037」と光源氏に揶揄されて終わってしまったのを受け、社会的地位や資産がなくても魅力のある女性がいることを左馬頭が説く。後の夕顔ほかの女性の登場の伏線になっている点で重要な発言である。こうした伏線は物語の主要人物でない左馬頭の発言だからよいのであって、一般に解釈されているように頭中将の発言と考えると、夕顔の当事者でもあるから作為的になってしまう。
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉
語りの対象:世に知られぬ女/発言者(左馬頭)
分岐型:A→(B→(C→(D→)))E→F:A→E→F、B→E、C→E、D→E
《思ひの外にらうたげならむ人の・閉ぢられたらむこそ》D・E
予想以上に愛らしい感じの人が、余儀なく隠れ住んでいるとしたら、それこそ
《限りなくめづらしくはおぼえめ》F
限りなくすばらしいことだと思えましょう。