若宮はいかに思ほし 064
原文 読み 意味 桐壺05章15(63・64共通)
(命長さのいとつらう思うたまへ知らるるに 松の思はむことだに恥づかしう思うたまへはべれば 百敷に行きかひはべらむことはましていと憚り多くなむ かしこき仰せ言をたびたび承りながら みづからはえなむ 思ひたまへたつまじき)
若宮はいかに思ほし知るにか 参りたまはむことをのみなむ思し急ぐめれば ことわりに悲しう見たてまつりはべるなど うちうちに思うたまふるさまを奏したまへ ゆゆしき身にはべれば かくておはしますも忌ま忌ましうかたじけなくなむ とのたまふ
(いのち/ながさ/の/いと/つらう/おもひ/たまへ/しら/るる/に まつ/の/おもは/む/こと/だに/はづかしう/おもう/たまへ/はべれ/ば ももしき/に/ゆきかひ/はべら/む/こと/は/まして/いと/はばかり/おほく/なむ かしこき/おほせごと/を/たびたび/うけたまはり/ながら みづから/は/え/なむ おもひ/たまへ/たつ/まじき)
わかみや/は/いかに/おもほし/しる/に/か まゐり/たまは/む/こと/を/のみ/なむ/おぼし-いそぐ/めれ/ば ことわり/に/かなしう/み/たてまつり/はべる/など うちうち/に/おもう/たまふる/さま/を/そうし/たまへ ゆゆしき/み/に/はべれ/ば かくて/おはします/も/いまいましう/かたじけなく/なむ と/のたまふ
(命の長さが大層つらく思い知られるにつけ、高砂の松がわたくしをどう見るか想像してさえ居たたまれませんのに、百官集う宮中に出入りするなどはまして憚り多いことで、かしこき仰せ言を度たび承りながら、わたくし自身はいかにしても、参内を思い立てそうにございません。)
若宮はどのようにしてお知りになってか、宮中に参ることばかりを願われご準備なさっておいでの様子ですので、そうなさるのが道理ながら悲しくお見受けいたしておりますことなど、心の中で考えていることなどを内々にご奏上ください。(娘に先立たれた)不吉な身でありますれば、このまま宮がここにあそばされるのも忌まわしく恐れ多いことで、と母北の方はおっしゃる。
文構造&係り受け
助詞と係り受け(63・64共通)
(命長さのいとつらう思うたまへ知らるるに 松の思はむことだに恥づかしう思うたまへはべれば 百敷に行きかひはべらむことはましていと憚り多くなむ かしこき仰せ言をたびたび承りながら みづからはえなむ 思ひたまへたつまじき)
若宮はいかに思ほし知るにか 参りたまはむことをのみなむ思し急ぐめれば ことわりに悲しう見たてまつりはべるなど うちうちに思うたまふるさまを奏したまへ ゆゆしき身にはべれば かくておはしますも忌ま忌ましうかたじけなくなむ とのたまふ
※ 注釈・助詞・助動詞・敬語の区別などの説明は064参照
耳からの情報伝達;立ち現れる〈モノ〉(63・64共通)
語りの対象:母君/長寿の象徴/帝/若宮/命婦
分岐型・中断型:〔A→B→C+D→E|〕+〔F→(G→)H→I→J|〕+〔K→L→M〕→N:〔A→B→C+D→E|〕+〔F→(G→)H→I→J|〕+〔K→L→M〕→N
《命長さのいとつらう思うたまへ知らるるに》 A
命の長さが大層つらく思い知られるにつけ、
《松の思はむことだに恥づかしう思うたまへはべれば》 B
高砂の松がわたくしをどう見るか想像してさえ居たたまれませんのに、
《百敷に行きかひはべらむことはましていと憚り多くなむ》 C
百官集う宮中に出入りするなどはまして憚り多いことで、
《かしこき仰せ言をたびたび承りながらみづからはえなむ》D
かしこき仰せ言を度たび承りながら、わたくし自身はいかにしても、
《思ひたまへたつまじき》E
参内を思い立てそうにございません。
《若宮は・いかに思ほし知るにか》F・G
若宮はどのようにしてお知りになってか、
《参りたまはむことを・のみなむ思し急ぐめれば》H・I
宮中に参ることばかりを願われご準備なさっておいでの様子ですので、
《ことわりに悲しう見たてまつりはべるなど うちうちに思うたまふるさまを奏したまへ》J
そうなさるのが道理ながら悲しくお見受けいたしておりますことなど、心の中で考えていることなどを内々にご奏上ください。
《ゆゆしき身にはべれば・かくておはしますも・忌ま忌ましうかたじけなくなむ》K・L・M
(娘に先立たれた)不吉な身でありますれば、このまま宮がここにあそばされるのも忌まわしく恐れ多いことで、
《とのたまふ》N
とのご返事でした。